雑談

AIにどんでん返し小説を書かせてみたら、想像以上にぞわっとする話ができた

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AIに小説を書かせてみた

ある日ふと思った。

どんでん返し系の小説って、構造さえ決まれば書けるんじゃないか。だったらAIに作らせてみたら面白いんじゃないか、と。

テーマは「ストーカーがストーカーされていた」。

読者は女の視点で読み進めて、ハッピーエンドだと思って安心する。でも最後の一文で、男の側に何かが見える。読者だけが気づいて、ぞわっとする。女は何も知らないまま幸せでいる。

この「読者だけが怖い」という構造を、AIと一緒に作ってみた。


作り方:オチから逆算した

最初に決めたのは、最後の一文だ。

どんでん返し系を作るとき、オチから逆算するのが一番やりやすい。AIにいくつか候補を出してもらって、最終的に選んだのがこれだった。

「……本当に、偶然って重なるもんだね」

「本当に、」という強調が入ることで、二重の読み方ができる。女には感慨深く同意しているように聞こえる。読者には自分に言い聞かせているように聞こえる。この二重性が気に入った。

タイトルもここから取って、「偶然、重なる」にした。


一番こだわったのは、ストーカー描写の「温度感」

この小説で一番やり取りを重ねたのが、主人公アオのストーカー描写だ。

最初のAIの出力は、わりとあっさりしていた。「おかしいとは、思わなかった。」という一文で締めていたんだけど、それだと読者に「これはストーカーです」と説明してしまっている感じがした。

そこで修正指示を出した。

「これでいつでも、会いに来られる。でゾワっとして終わり、にしたい」

純粋に幸せそうにしている方が怖い。自己弁護じゃなくて、ただ安心している。その方が読後感がぞわっとする、という判断だった。

出てきたのがこれ。

エントランスに消えていく背中を見届けてから、私はスマホを取り出した。住所をメモした。

これでいつでも、会いに来られる。

「なんだか安心した」という一文をさらに削って、ここで段落ごと終わらせた。余韻は読者に委ねる方が正解だと思った。


伏線は「読み返したときに気づく」ように仕込んだ

どんでん返しを成立させるには、読んでいる最中は流せるけど、読み返すとぞわっとする伏線が必要だ。

AIに出してもらったアイデアをベースに、以下の三つを仕込んだ。

① カフェモカ
涼介がアオに奢るコーヒーが、アオのいつも頼むカフェモカだった。アオは「好みが合う」と嬉しくなる。でも読者は、涼介が最初から知っていたことに気づく。

ここの表現は自分で指定した。「私の好きな微糖のコーヒーだった」と直接書くんじゃなくて、アオが勝手に運命を感じている描写にしたかった。「いつもの味なはずなのに、今日は何故か、苦味が強かった」という一文は、アオの罪悪感をセリフじゃなく味覚で表現していて、気に入っている。

② 本の趣味が完全一致する
涼介が読んでいた本が、アオの大好きな作家のものだった。持っている書籍まで全て一致していた。アオは「運命かもしれない」と思う。でも実際は、涼介がアオの趣味嗜好を把握していただけだ。

③ 告白の言葉
涼介の告白「アオさんと、もっとちゃんと向き合いたいと思ってる」は、ふたりで読んだ本の中の、主人公の愛の告白の言葉だった。アオは涼介に言っていない、自分の一番好きなセリフだ。なぜ彼が知っているのか、アオは気づかない。

この伏線は自分で提案した。本屋のシーンで「趣味が合う」という伏線を張っておいて、告白の言葉でそれを回収する構造にしたかった。


AIと創作してみて思ったこと

正直、想像以上だった。

構造の設計やアイデア出しはAIが得意で、「この表現はこういう意図で変えたい」という細かい修正指示を出していくのが人間の仕事、という役割分担が自然にできた。

ただ、指示を出す側にも「何が怖いか」「どこで読者に気づかせたいか」という判断が必要で、そこは結局人間が考えないといけない。AIはあくまで実装してくれる存在で、方向性を決めるのは自分だった。

どんでん返し系に限らず、「構造を先に決める」タイプの創作はAIと相性がいいと思う。興味ある人はやってみてほしい。

それでは、本文をどうぞ。


偶然、重なる

一章

 佐藤涼介は、いつも傘を持っていた。

 雨の日も、晴れの日も。鞄の端から細い柄がのぞいていて、それが彼のトレードマークになっていた。なぜかと聞いたとき、彼は照れくさそうに笑った。

「急に降り出したとき、誰かに渡せるかなって」

 そういう人だった。


二章

 最初に見たのは、三月の終わりだった。

 地下鉄に乗り込んだとき、人混みの中で彼だけが静止しているように見えた。スーツの袖をきっちり合わせて、吊り革を軽く持ちながら、文庫本を読んでいた。周りがスマホを見ている中で、紙の本を読んでいる人を久しぶりに見た気がした。

 翌日も、同じ時間にホームに立ち、彼を見つけては、また同じ車両に乗った。

 その次の日も。

 べつに、おかしくはないと思った。通勤ルートが同じなんだから、同じ電車に乗るのは当然だ。たまたま同じ車両になるのだって、ホームの端から乗る習慣があれば自然なことだ。

 一週間が経った頃、乗り換えの駅で彼が降りるのを見た。私の降りる駅ではなかったけど、気づいたら同じドアから出ていた。

 改札を出た先で、彼が入っていくビルを確認した。翌朝、そのビルの看板をスマホで撮った。

 調べたら、中堅の商社だった。名前は会社のウェブサイトに載っていた。写真も。

 佐藤涼介、三十二歳。

 スマホのメモ帳に保存した。なんとなく、消せなかった。


三章

 別な日に、同じように彼の会社のビルの前を横切った。その時たまたま彼を見かけた。

 彼が入っていくカフェを見つけた。

 翌日、同じ時間に行ってみたら、彼がいた。窓際の席で、昨日と同じように本を読んでいた。私はカウンター席に座って、彼の横顔を見ながらコーヒーを飲んだ。

 彼は私に気づかなかった。

 それが少し、残念だった。


 メモ帳の記録が増えていくのは、気づいたら自然なことになっていた。

 月曜と木曜は昼にカフェ。火曜は弁当を買って近くの公園。雨の日は社内で済ませるらしく、外に出てこない。退勤は大体十九時から二十時の間。残業があるときは二十一時を過ぎる。そういう夜は少し疲れた顔をしているけど、コンビニで缶コーヒーを買って、ホームに向かう足取りはいつも一定だった。

 ある夜、残業帰りの彼を見かけた。改札から出てきた彼の顔は、確かに疲れていた。私は三メートル後ろから、同じ方向に歩いた。

 彼のアパートがわかったのは、その夜だった。

 エントランスに消えていく背中を見届けてから、私はスマホを取り出した。住所をメモした。

 これでいつでも、会いに来られる。


四章

 その夜は、仕事が長引いた関係で、いつもの電車を逃してしまった。次の電車の時間まで時間があって、私はいつものカフェの前を通った。閉店後の灯りの消えたショーウィンドウに、自分の顔が映った。

 雨が降り始める。私は用意していた傘を広げる。その時、急な突風に煽られ、傘の骨が折れてしまった。

「あっ」と声を上げたが、もう遅い。私は呆然とその場に立ち尽くしてしまう。

「よかったら、これ」

 不意に声を掛けられて驚いた。

 振り返ると、そこには、「いつもの」涼介が立っていて、私に傘を差し出していた。

 頭の中が、一瞬で空白になった。

「僕、すぐそこなので。よかったら」

「あ、で、でも」

「濡れますよ」

 彼は笑った。困ったような、でも優しい笑いだった。

 私は傘を受け取った。手が少し震えていた。


五章

 翌日、私はランチの時間に仕事を抜け、あのカフェにいた。今日は水曜日、本来なら彼はカフェにはこないはず。

 それでも、淡い期待を持って、来てしまっていた。

 涼介はカフェのカウンターでコーヒーを頼んでいた。

「あの、、、」

 と声をかける。涼介は顔をあげ、「ああ、昨日の、、」と返してくれた。

「昨日は、あ、有難う御座いました。」

「いえいえ、昨日、ちゃんと帰れました?」

 昨日のことを心配してくれる彼。私は少しだけ、胸が痛かった。

「よかったら、何か飲みます?奢りますよ」

 遠慮したつもりだったが、彼は無理やり買ってくれた。

「じゃあ、仕事があるので、」

 そう言って、涼介は立ち去っていった。

 特に伝えたつもりはなかったが、彼が買ってくれたのは、いつも私が頼むカフェモカだった。

 いつもの味なはずなのに、今日は何故か、苦味が強かった。


 その週の金曜、昼に公園のベンチで鉢合わせた。彼はサンドイッチを食べていた。私がコンビニの袋を持ったまま立ち尽くしていたら、「よかったら」と隣を示された。

 並んで食べた。たいした話はしなかった。天気のこと、駅前に新しいビルが建つこと。でも彼は、私が話すたびにちゃんとそちらを向いた。スマホを触らなかった。


 また翌週、同じ本屋で会った。

 涼介が手にしていたのは、私がずっと好きな作家の新刊だった。

「好きなんですか、この人の本」

 思わず声をかけていた。

「最近読み始めたんです。アオさんは?」

「昔から好きで。デビュー作から全部持ってます」

 涼介は少し目を輝かせた。「じゃあいろいろ教えてください」と言って、そのままレジに並んだ。

 それから二時間、本の話をした。彼は私の話をよく聞いた。どの作品が好きか、どの登場人物に自分を重ねるか。彼もまた、その作家について話してくれた。初めて読んだ作品、持っている書籍。その全てが、私と見事に一致していた。

 運命かもしれない、と思った。


 別れ際、涼介が言った。

「そういえば、アオさんって甘いもの好きですか」

「好きですよ、なんで?」

「いや、駅前に、美味しそうなスイーツ屋さん見つけて、今度一緒にどうかなって」

「えっ」

 驚く私。そのお店は、私がいつも気になっては、なかなか入れないでいたお店だったのだ。

「偶然。私も行きたいと思ってたお店なの」

 なんで分かったのか、そう問おうとして、一瞬躊躇う。そんな私を見透かしたように、彼は、

「そうなんだ、いや、なんとなく、そうじゃないかって思って。」

 彼は笑って、それ以上は言わなかった。

 私はその夜、その会話を何度も思い返した。なんとなく、という言葉の意味を考えた。

 深い意味なんてないと思った。


六章

 それからさらに、涼介のことがわかって来た。

 エレベーターのドアは必ず押さえる人だった。コンビニの前でたむろしている高校生を、怒るでも避けるでもなく、ただ自然によけて通った。財布にはいつもポチ袋が入っていて、私の誕生日には小さなメッセージカードと一緒に渡してくれた。大げさな祝い方はしない。ただ、忘れない。それだけのことを、彼はずっと続けていた。

 一緒に過ごしていた時、「片付けたい仕事があるから」と、彼は申し訳なさそうに、作業を始めた。ちらりと見ただけで、それが職場の後輩のミスを直しているのだと分かった。彼のことだろう。後輩本人には何も言わず、そっと直すつもりなのだろう。誰も気づかない。気づいた人間は少ないと思う。

 こういう人が、世の中にいるんだと思った。

 私がずっとメモ帳に記録していた人は、本当にそういう人だった。

 その事実が、少しだけ苦しかった。


七章

 告白されたのは、八月の終わりだった。

 夜の公園のベンチで、涼介は少し間を置いてから言った。

「アオさんと、もっとちゃんと向き合いたいと思ってる」

 唐突な言葉だったが、それが私には愛の告白だと分かった。一緒に読んだ本の中で出てきた、主人公の愛の告白の言葉。彼にも言っていない、私の一番好きな言葉。

 うまく返事ができなかった。

 泣きそうになった。声が出なかった。それでも彼は待っていてくれた。急かさなかった。

 私はしばらくして、小さく頷いた。

 自分がこの五ヶ月間、何をしていたか。メモ帳の記録。ビルの前。アパートまでついていった夜。

 そのことを、もう誰も知らなかった。

 知らなくていいと思った。

 これからは、普通に好きでいられる。

 それだけで、十分だった。


八章

 秋の夜、ふたりで歩いた。

 並んで歩くのに、もう慣れてきた頃だった。

 私が言った。

「不思議だよね。あの雨の日がなかったら、きっと話しかけられなかった」

 涼介は少し前を向いたまま、黙っていた。

 街灯の光が、彼の横顔に落ちた。

 その瞬間だけ、私には見えなかった。

 涼介の口元が、ゆっくりと歪んだことを。

「……本当に、偶然って重なるもんだね」


おわりに

読んでくれてありがとう。

読み返すと、涼介の言動が全部違う意味に見えてくるはずだ。カフェモカ、本の趣味、スイーツ屋、告白の言葉。全部「偶然」に見えて、実は違う。

よかったら、もう一度最初から読んでみてほしい。

また書いたら載せます。

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