
現在公開中のクリストファー・ノーラン監督の注目作
TENET (テネット)
難解な設定だけに、一度見ただけではなかなか理解できない今作。
今回は、分かりにくい時間軸の解説を行っていきます!
まだ、本編をご覧になっていない方向けに、ネタバレなしで紹介もしています!
ストーリーの詳しい解説はこちらの記事から

Contents
あらすじ
CIAの諜報員である「名もなき男」(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、キエフのオペラ劇場にて、テロリストの鎮圧のミッションに出動。
その結果、自身と仲間1人が囚われるという失敗を侵す。
仲間を裏切るよりは、死ぬことを選んだ彼は、与えられた毒のピルを飲む。
目が覚めた「主人公」は死んでおらず、フェイと名乗る男から、試験の「合格」を告げられる。
実はミッションは、彼が自分を犠牲にしてまで秘密を守り通せるかを試しており、それに合格した彼にフェイは、ある「ミッション」を課す。
それは第3次世界大戦を防ぎ、人類を救うというもの
未来から、「時間の逆行」を行う装置が送られたことで、時間を「過去に進められる」ことを知る主人公。
それによって、人類が滅亡する可能性を示唆された彼は、突如現れた協力者「ニール」(ロバート・パティンソン)とともに、人類を救うミッションへと身を投じる。
訳の分からないままミッションに参加する主人公と、謎の協力者「ニール」
「時間が逆行」するとは何か、本当の黒幕は誰なのか、そして「名もなき男」はミッションを成功させ、人類を救うことができるのか、、、
予告編はこちらから
分かりにくい時間軸を徹底図式化!
今作の時間軸を説明するにあたり、分かりにくい時間軸を図式化してみました。
まずはこちらで、この映画の時間軸を整理してみましょう。

その中でも難解なシーンとして、今回
の場面で、何が起こっていたのか、解説をしていきます。
説明の都合上、今我々が過ごしている平常時の時間の進み方を「直行」
逆に、時間が逆回しになる時間の流れを「逆行」
と読んで説明させて頂きます。
カーチェイスのシーン

カーチェイスのシーンですが
結局、「プルトニウム241」はどこにあったの?
最終的にセイターはどうやって「プルトニウム241」を手に入れたの?

と混乱した人がいるのではないでしょうか?
先ほどの図でいうと、この黄色い枠内のシーンですね。

それでは、シーン順に、一つ一つ説明させて頂きますね。
「名も無き男」たちが「プルトニウム241」を盗み出す
(もちろん、セイターに渡すつもりはありません)
↓
この時点で未来からの情報が入るまで、セイターは待機します。
↓
未来から「逆行」してきたセイターからキャットを人質に「プルトニウム241」を要求される。
↓
セイターを騙し、ケースのみセイターに渡す。
「プルトニウム241」自体は「謎のBMW」の中に投げ入れる
↓
未来から(「逆行」してきたセイターによって)知り得た情報を元に、「直行」時間のセイターの部下たちは、「名も無き男」たちを追い詰める
↓
「逆行」時間のセイターの尋問により「プルトニウム241」が「BMW」にあることを漏らす「名もなき男」
↓
ここで「直行」時間軸のセイター登場
↓
「名も無き男」の様子から、今から「逆行」する自分が「プルトニウム241」の隠し場所の情報を得たことを知る。
↓
「名もなき男」に情報を漏らさせた事実を、成り立たせるために、「逆行」世界に入るセイター
↓
そのセイターを追いかけるため、自らも「逆行」世界に入る「名もなき男」
↓
何気なく施設の前に停まっていた「BMW」に乗り込む
(実はこの時点でこの「BMW」の中に「プルトニウム241」があります)
↓
ケースのGPSを元に、空のケースが捨てられた場所でセイターと部下たちを待ち伏せる
↓
捨てた時点から「逆行」して、「プルトニウム241」の場所(謎の「BMW」の行方)を探ります。
↓
セイターを追ううちに、そのセイターを”追っていた”(「逆行」世界の「名も無き男」にとっては、これから追われるのですが、)「直行」世界の「名もなき男」たちの車が見えてきます。
↓
その瞬間、これから"投げ入れられる"「プルトニウム241」が車内で動き始める
↓
そこで初めて「名も無き男」は、自分の「BMW」こそが、「直行」世界で自分が「プルトニウム241」を投げ入れた「謎のBMW」だと気づく
↓
気づいた時には遅く、「直行」世界の「名も無き男」に"投げ入れられた"ことで、「プルトニウム241」が「BMW」から出て行く
↓
カーチェイスにより、「逆行」世界の「名も無き男」の運転する「BMW」が横転する
↓
その車と、一連の流れを見ていたセイターもようやく、「プルトニウム241」のありかに気づく
↓
「名も無き男」を「BMW」ごと爆破させ、「直行」世界に戻るセイター
↓
「直行」世界で、「逆行」世界の「名も無き男」が「BMW」に乗り込んできた"後"に、無人の「BMW」から「プルトニウム241」を手に入れるセイター
つまり、恐らくですが
「名も無き男」自身が、時間逆行の考え方に慣れていなく、「逆行」時間の出発点が、「直行」時間の終着点であると理解できていなかったこと
が、このシーンをややこしくしているのではないでしょうか。
また、セイターも恐らく完全には、「逆行」時間としての考え方に慣れていなかったのではないでしょうか。
加えて、「プルトニウム241」が本当に、BMWに移動させられたのか、確認も必要だったため、「名も無き男」爆発の場面まで時間を「逆行」させる必要があったのではないでしょうか?
そして、セイターが実際に「プルトニウム241」を手に入れているシーンを描かれていないことも、視聴者を混乱される原因の一つにもなっています。
そんな「逆行」時間という直感に反する時間軸のややこしさが、(視聴者含め)全員の勘違いを生み、このようなストーリーになってしまった場面とも言えますね。
スタルスク12での戦い

この戦いでは「時間の挟み撃ち作戦」を決行しているため、若干分かりにくいシーンになっています。
時間軸の図でいうと、画像の黄緑枠の部分になります。

この「時間の挟み撃ち」が理解できていなければ、
なんでニールは、「直行」世界に移動したんだろう?

といった疑問も生まれるかもしれません。
この「時間の挟み撃ち作戦」の目的は
情報戦を有利に進めるため、未来の情報を得ること
です。
そのために、未来の情報を得られる「逆行」軍を送る
のです。
ニールの所属した「逆行」軍は、「直行」軍が侵攻した1時間後に「逆行」して進軍します。
その時点で、侵攻"前"に「アルゴリズム」を封じるための爆発が起きています。
この時点で
爆発のある場所 = 「アルゴリズム」のある場所
が分かるのです。
当然セイター軍は、その情報漏洩を恐れて、それを阻止しようとします。
そのために、自らの軍も、「逆行」軍を作り出し、プリヤの軍を全滅させようとします。
(「逆行」軍に「直行」軍をぶつけても、お互い戦いにくいので、、、)
そのため、「逆行」軍同士の戦闘も自ずと生まれてきます。
セイターとプリヤの、それぞれの「逆行」軍と「直行」軍が同時に同じ場所で戦闘をしているため、映像的に分かりにくくなっているかもしれません。
ですが、なぜ「逆行」軍が有効なのか、そして、セイターもなぜ「逆行」軍を用意する必要なのかだけ理解しておけば、この戦いの目的も見えてくるのではないでしょうか。
ニールの行動の意図
では、なぜ、「逆行」軍にいたニールは、「直行」世界に移ったのか?
その答えは
「名も無き男」とアイヴスを助けるためです。
「逆行」世界で
爆発
↓
「名も無き男」とアイヴスが進入
↓
セイター軍のボルコフが罠として爆弾を仕掛ける
という場面を目撃したニール。
(この時点で「直行」世界目線では、ニールは爆弾設置"前"の時点にきています)
一連の流れから
「名も無き男」とアイヴスが、敵の罠にはまり、地下に閉じ込められた
↓
2人が爆発を回避するために、助けが必要
と判断します。
そのため、敵の「回転ドア」を用いて「直行」世界に戻り、危険を知らせようとします。
この時点で、「直行」世界の、爆弾を仕掛ける前の時点にいるニール
「名も無き男」とアイヴスに、車のクラクションで注意を引きます。
(こちらは、「名も無き男」視点でもちゃんと描かれています)
しかし、2人には気付かれず、2人が閉じ込められることを防ぐことに失敗
最終的には、なんとか機転を利かせて、クライマックスの爆発から2人を救い出します。
(ちなみにこの脱出は、「逆行」軍が侵攻する際にも描かれていますね)
つまり、ニールも「時間の挟み撃ち」作戦を独自に行ったことで、「名も無き男」たちを助けることができたのです。
「時間の挟み撃ち」という、こちらも直感に反する作戦なため、このシーンを難解にさせているのではないでしょうか。
しかし、この作戦の目的を抑えておけば、この場面の重要性も見えてきますよね。
クリストファー・ノーラン監督の映画は、時間軸がバラバラなことで、分かりにくいと有名です。
しかし、実は今回の「テネット」では、主人公「名も無き男」目線で言えば、時間軸は一定のままなんですよね。
なので、しっかりとこの時間軸を整理しておけば、物語の真実も見えてくるのではないでしょうか?
この記事を参考にして頂き、ぜひまた見返してみてください。
新たな発見ができるかもしれませんよ!
ちなみに、私なりにこの映画を考察してみましたので、合わせてお読みいただければ嬉しいです。
